「到着ー! へぇ、ここが天城なんだね!」
グライザーの背に乗り、二人は目的の場所に到着した。
興味深げにあたりを見回す彼女を見つめながら、クーリアはニコリと口角を上げる。
彼女を足代わりにすることはできた。後は何の目的でここへやってきたのか聞き出した後、自分達の邪魔になるようであれば隙を見て排除してしまえばいい。
人好きのしそうな笑みを張り付けて、きょろきょろと周囲を眺めていた彼女に話しかける。
「プラリネさん、こちらに何の御用があるのかしら。よろしければ私が天城をご案内して差し上げますわ」
「本当! それは助かるなぁ」
喜ぶ彼女を前に、クーリアは心の中でほくそ笑む。
彼女の思惑を知らぬまま、プラリネが自身の目的を話そうと口を開いた、その時。
「ガァアアアアッ!!」
突然、二人の真上から空を破って何かが降ってきた。
「わひゃぁっ!?」
「……っ!?」
とっさに飛び退き間合いを取った二人は、それを見て目を丸くする。
「ガ……ッァア……グアァアッ」
「……あら」
クーリアは口元に手を当てて驚く。
仲間である6号だったのだ。しかし、どうやらいつもと様子が違う。
とっさに声をかけようとするが、今度は6号が空けた穴から彼を追ってイデアルが現れた。
(これは……よくありませんわね)
イデアルの姿と我を忘れ苦しむ6号に、状況を理解したクーリアはため息を吐いた。
「うーん? んんんー? あれれ……」
6号の無秩序な攻撃を避けながら、プラリネが首を捻る。
彼女が続けて言葉を発する前に、クーリアは彼女達の間に割り込むようにして6号の前へ出る。
「まったく手間がかかる子ですわね、少し大人しくなさい」
「ウ、ガァッ!?」
彼女の背から出現した龍腕が身体を抑え込む。
その衝撃で6号が意識を失ったのを確認すると、彼女はくるりと振り向きプラリネに微笑んでみせた。
「残念ですが、貴方に構っている暇がなくなってしまいましたわ。これで失礼いたします」
「え、あ、うん?」
「……逃がしません」
状況が掴めずポカンとしているプラリネの横からイデアルが前に出る。
しかしその時、かすれて消えかけそうな声と共に、ぽたりと一滴の滴が地面に落ちた。
「オ母……サン……」
気を失っているはずの6号の言葉に、イデアルの足がピタリと止まる。
そんな彼等を横目に、クーリアは彼を連れて闇の中へ溶けていった。
二人の姿が消え静寂が辺りを満たす中、イデアルは茫然と両手を見つめる。
「……私、何故動けなくなったのでしょう」
とても大切なものを忘れている気がする。けれどそれが何かは、わからない。
しばらくした後、イデアルはゆっくりと顔を上げた。
「任務を、遂行しなければ」
ぽつりと一言をこぼして、イデアルはクーリア達が消えた方向に去っていった。
一人残されたプラリネは、ただ目を丸くして皆が消えた方を眺める。
「うーん、なんだかとっても大変な事になってるみたいだねぇ」
『ご主人、手を出す気か』
「出したいけど、今は我慢! ボクはボクの目的を果たさなくちゃいけないからねっ!」
プラリネはグライザーの背に乗り、飛び去った。
一冊の本をその手に抱えて。
【関連モンスター】
しっかり予習するんだズオ(`・ω・´)