龍の章ストーリーを更新!番外編「夜の飲み会」「オトモダチ」「愚痴会?」の3話を追加

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龍の章ストーリーを更新!番外編「夜の飲み会」「オトモダチ」「愚痴会?」の3話を追加
 
ストーリーの龍の章の話が更新された。


 
 
夜の飲み会
美しく空に浮かぶ満月を肴に、スオウは自慢の大盃を傾けていた。
そんな彼の隣にヴァレリアとチュアンが腰を下ろす。
「彼女から聞いたぞスオウ、龍王から届け物を頼まれたらしいな。しかもその品、チュアンに創らせたんだって?」
「あぁ、奴等の大事な子等に贈り物だとさ。最初は面倒だと渋ったんだが、秘蔵の酒を出されちゃ断れねぇよなぁ」
にやりと口角を上げる彼に、ヴァレリアはお前らしいと笑みを浮かべる。
そんな二人をよそに、チュアンは早々に自前の盃を突き出した。
「ムフフ、龍王の秘酒なんて滅多にありつけないからねぇ。仕事の報酬にゃぴったりだ。ほらスー、早く注ぎなよ」
「へいよ」
スオウは彼女の盃になみなみと注ぎ、ついでにヴァレリアの分も手渡しながら世間話を続けていく。
「そういや、ヴァレリアの所も厄介なことになってるらしいじゃねぇか」
「ムフ、教え子が多いとお世話が大変だねぇ」
「そんなことはないぞ? 皆、私の可愛い弟子達だ。だからこそ、できるなら彼女達が争うような事態は避けたいと思ってしまうな。私もまだまだ甘い」
「なーにを今更。ヴァーレは昔っから飴ちゃんよりも甘々だったじゃないか」
空いた杯に次の酒を注ぎながら突っ込む彼女に、ヴァレリアはそうだったかと笑みをこぼす。
「まぁなってしまったものは仕方がないから、あの子達の頭に拳骨でも飛ばしてくるさ」
「そりゃあ良い、せいぜい泣かせてやんな」
「ムフ、拳骨で足りなけりゃワガハイがハンマーでもこさえてやるよ。叩くと音がするヤツでさ」
静かな夜に軽快な笑い声が響く。
三人は美味い酒を堪能しながら、これから会いに行く者達へ思いを馳せていた。
 
翌日早朝。
「スオウ! このバカ! 放っておいたらすぐベロンベロンになりやがって!!」
「あーあー、ウチの教官も一体どんだけ呑んだのかねぇ……」
そろって潰れた二人に、文句を言いながら回収する少年少女の姿が目撃されたとか、されなかったとか。
「ムフフ、二人ともまだまだだねぇ」
 
【関連モンスター】

 
 
オトモダチ
ほの暗く静かな空間で、ディステルは静かに書物を読みながら考え事にふけっていた。
多少の邪魔は入ったものの必要なものは手に入り、龍覚印も天城に集まりつつある。
もうすぐ彼を継界へと帰還させることができる。
ディステルはそっと胸の上で揺れるペンダントに触れた。
「……貴様とて、本当はもう一度彼に会いたいと思っているくせに」
「なぁんのこと?」
無意識のうちに呟かれた言葉に、あるはずのない返答が返ってくる。
それは脳裏に描いていた、貧弱で情けない眼鏡顔の声ではなかった。
「何をしに来た、ロシェ」
考え事を邪魔され、冷ややかな声を浴びせる。
しかし彼女はお気に入りのドリンク(チョコミントの様な味らしい)を手に、クスクスと笑い声を響かせる。
「クフフ、お散歩してたらディスがボケっとしていたから声をかけてあげたのよ。ひとりぼっちは寂しいものねぇ。アタシが構ってあげなくちゃと思って」
「余計な世話だ」
「それで? さっきのは誰に向かっての言葉なの?」
「人の話を聞……貴様には無理か」
一度ノリだしたら止まらない性質にため息を吐くと、ディステルは無視することを決めて開きっぱなしの書物に目を向ける。
「クフ、フフフフ! さっき独り言をつぶやいていたアンタね、とっても切なくて気味が悪い顔をしてたのよ」
ひどい言われ様だが知らぬふり。
そんな彼に構わず、ロシェはおかしそうに笑みを深めた。
「クフ、クフフ。誤魔化したってダメよ。だってアタシは知っているもの。アナタのその顔はね……オトモダチのことを考えているときの顔でしょう」
ピクリ。
“友達”という単語でわずかに反応を見せたディステルに、彼女は歓喜の表情を見せて両手を大きく振り上げる。
バシャリと手にしていた飲み物が音を立てて零れ落ちた。
「わかる、わかるわディス! アタシには貴方の気持ちがよぉく理解できる! さぞ気持ちが悪くて苛々して吐き気がするでしょう!? ああ、ディスも一緒なのね」
「……私が貴様と一緒だと」
氷のように冷たい瞳がロシェを貫く。
けれど彼女は凍えることなく、袖に隠れた手でディステルの頬に触れる。
「だってアタシもオトモダチのことを考える時、同じ顔をしているもの。アタシを一番に選ばなかった、可愛くて憎らしいあの子のことを考えるとね」
そう言って、ロシェは狂ったように笑い声をあげた。
 
「……勝手にそう思っているがいい。そしてロシェ」
「なぁに?」
「貴様が盛大に零した飲料、全て私の服に飛び散っているのだが?」
「……あ」
ほの暗い静かな部屋に、ぽたぽたと雫が滴り落ちていた。
 
【関連モンスター】

 
 
愚痴会?
満月が綺麗な夜のひと時。
互いに腐れ縁を主張するスオウとヴァレリアが酒盛りをしている間、いつも彼等の側についている者達は美味しいご飯に舌鼓をうちながら、それぞれ普段は言えない(本人に言っても効果がない)愚痴を言い合っていた。
「スオウの奴またオレ達の目を盗んで酒飲みに行きやがって! 旅の費用だって馬鹿になんねぇんだぞあの飲んだくれ野郎!」
ドン! と机にグラスを勢いよく叩きつけるアルファに、オメガがびくびくと肩を震わせる。
(ちなみに中身は果実を使って作られたジュースである)
「ア、アルファ、落ち着いて……」
「うるせぇ! 大体お前がなんでも間でもうんうん頷くからあのバカが調子に乗るんだ!」
「う、うぅ……。だってスオウ様が欲しいって言うから。お、お役に立ちたくて……」
「だからってオレが寝てる間に、財布の中身全部酒に変えてんじゃねぇぇ!」
やけ酒ならぬやけジュースのごとくがぶがぶとグラスの中身を飲み干すアルファ。
そんな彼に苦笑しながら空いたグラスに追加を注ぐのは、龍喚士としてヴァレリアから教えを受けているヴィゴだ。
「スオウ殿のお世話、大変そうだなアルファ君」
「でもオメガちゃんに当たっちゃダメでしょ。女の子は大事にしなさいよね」
泣きそうな彼女をあやしながら、ウィゴと同じ師を持つミラがアルファを注意する。
どこか天然気のある直属部隊隊長の姉と違いしっかりした性格で、小さなオメガを傍で庇っていた。
「アンタらの所は良いよな、ヴァレリアさん美人だし、ボンクラじゃないし」
「いやぁ、そーんなことないからね」
羨まし気なアルファの言葉を否定したのは、ヴィゴ達と同じ弟子のリエトだった。
「確かにウチの教官は美人だけど、そーとー気まぐれで無茶苦茶な人だよ。なぁヴィー」
「ハハッそうだな。前も修行だって言われて、魔物の巣に武器なしで放りこまれた時は死を覚悟したっけ。まぁ良い経験だったよ」
「でも師としては尊敬すべきお方よ。武器の手入れやご自分の怪我には疎くて、家事スキルも皆無だけど。それでも戦場で剣を振るう教官は誰よりもカッコいいんだから!」
「いやそれフォローになってなくねぇ?」
聞いてみればお互いそう大差はなく、怒りが萎えていったアルファは小さいため息をつく。
そんな彼に、リエトは苦笑しながらポンポンと頭をたたいてやった。
「でも、そんな相手から離れようとは思わないんだから、どうしようもないよね」
「……うるせぇ」
悪態を吐くけれど否定はしない。そんなアルファに、オメガはくすりと微笑む。
手のかかる者ほど放っておけないとはよく言ったものだ。
そんなことを考えながら、彼等はそれぞれが仕える大人達を思い浮かべた。
 
その翌日、酔い潰れたスオウとヴァレリアの後始末に駆り出され、やっぱり放っておいたほうが良いんじゃないかと思う少年少女の姿があったとか、なかったとか。
 
【関連モンスター】

 
 
しっかり予習するんだズオ(`・ω・´)