6号から逃げた後、ガディウスとサリアはイルミナの書庫に身を隠していた。
本を傷つけなければと許可を出してくれた彼女に感謝しながら、サリアは自分達と同じく書庫の隅を間借りしている女性に目を向ける。
「ご挨拶が遅れてしまい申し訳ございません。転界の龍喚士、カンナと申します。故あって天城内部に潜伏し情報を集めております」
「え、あ、ハイ……」
丁寧な挨拶に戸惑いながら、サリアはこっそりガディウスに耳打ちする。
「ちょっと、あの人信用して大丈夫なの?」
「オレも詳しくは知らねえが、敵じゃねぇのは間違いねぇよ。イルムの転移術で飛ばされそうだったオレを助けてくれたのもこいつだからな」
あの時、ガディウスだけ転移術の影響を受けず天城へ残ることができたのは、状況を観察していたカンナがとっさに護符を展開し、ガディウスを術から保護したからだった。
「私の力ではおひとりしか守護できず、申し訳ありませんでした」
「心配ねぇさ、兄貴ならすぐに天城へ戻ってこられるはずだ」
兄へ全幅の信頼を寄せるガディウスにカンナは小さく微笑みを浮かべると、二人に状況を伝える。
「私がこれまで得た情報ですと、イルムが欲していた“龍覚印”のほとんどが天城へ集結しつつあります。それに加えてもうひとつ。天城に、獄幻魔の娘らしき姿を確認いたしました」
「……!」
その言葉に、今まで黙っていたイルミナの耳がピクリと動く。
「おそらく彼女の力を使った思惑があるものと推察いたします」
「チッ、現状はイルム達の思い通りに事が運んでるってことか。気に入らねぇな」
「どうにかしないと、このままでは完全なる魔導書が完成してしまうわ」
全員が打開策を考える中、イルミナも作業机に飾られた小さなぬいぐるみを見つめる。
それは自分を友達と呼んでくれた少女が贈ってくれたもの。
(……ロミア)
イルミナの小さな手がぬいぐるみにそっと触れた、その瞬間。
「発見ー!!」
書庫の壁を突き破り、プラリネが勢いよく突撃してきた。
「オイオイ、いきなり何だ!?」
「敵襲!?」
各々はすぐに迎撃の態勢をとる。
しかし突撃した本人はヘラヘラと笑いながら砂埃の中から姿を現した。
「ここが天城の書庫かぁ! やーっと辿り着けたよ」
「……女の子?」
のんきな声に全員がポカンとした顔を見せる。
プラリネはそんな彼女達を気にも留めず部屋を見渡すと、ぱぁっと顔を明るくしてイルミナの前へやってきた。
「やぁ! ボクはプラリネって言うんだ。アナタが魔導書を管理する悪魔さんかな?」
「……」
黙ったままこくりと頷いた彼女に、プラリネは手にしていた本を差し出す。
「時空の魔術師さんから、アナタへのお届け物だよ!」
【関連モンスター】
しっかり予習するんだズオ(`・ω・´)