スオウは昔話を聞かせるかのように語り続けた。
理想を抱き世界中を旅する中、青年は龍に憧れを募らせる者や悪魔の血を引く者、理想に共感を示す龍喚士を仲間にしながら、己の願いを叶えるために進み続ける。
しかしその結果、「完全なる魔導書」を使い継界そのものを創り変えようとしたために世界の敵とされ、龍王達によって異空間へと封じられた。
「奴を封じた時、龍王は当時の青龍契士に命じて還爪の能力で雷龍との契約を強制解除させ、魂を二つに分断した。そのうちの一体が、今お前と契約しているドルヴァというわけだ」
浄雷と滅雷。二つに分かれた雷龍は、それぞれ彼等の故郷の両端に封印の鎖で縛られた。
それがセディンとドルヴァの成り立ちだった。
「……しかしそれは、何百年も前の話なのだろう。その男が異空間に封じられたままなら、俺と弟の父であるというのはおかしくないだろうか」
「そこはオレも随分と驚かされたぜー。何せお前ら、大分ややこしい生まれ方してたからな」
それは青年が異界に封じられてから、数百年の時が過ぎた頃。
彼の元に、いくつもの仮面と闇を携えた悪魔が姿を現した。
ダンタリオンと名乗ったその悪魔は、クスクスとほほ笑みながら青年に提案を持ちかける。
「そこはとても窮屈でしょう。よろしければ、私が貴方の魂を別の器に移して差し上げましょうか」
(……悪魔が私に手を貸して何の得がある)
訝しむ青年に、ダンタリオンは笑みを深めて答える。
「私は予想外のもの、面白いものが好きなのです。純粋すぎる己の願いに翻弄され、世界さえ敵に回した貴方はとても観察し甲斐のある人間でした。だからもっと、貴方の行動を見てみたくなったのですよ。ここへ干渉するのは苦労しましたが、貴方はその労力以上のイレギュラーを起こしてくださりそうですから」
クスクスクス。ケラケラケラ。彼に呼応するように頭上の仮面が不気味な声を上げる。
ダンタリオンが告げた理由は理解できるものではなかったが、それでも封じられたままより良いと考えた青年は、彼の誘いに応じた。
「悪魔の術で己の“影”を切り離し器にした奴は、継界に帰還して己の故郷に戻り、そこでひとりの少女と出会った。それが、お前達の母親だ」
【関連モンスター】
しっかり予習するんだズオ(`・ω・´)