絆の章ストーリーを更新!「シャゼルVSクーリアⅠ」「シャゼルVSクーリアⅡ」の2話を追加

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絆の章ストーリーを更新!「シャゼルVSクーリアⅠ」「シャゼルVSクーリアⅡ」の2話を追加
 
ストーリーの絆の章の話が更新された。


 
 
シャゼルVSクーリアⅠ
「あらあら、向こうは決着がついてしまったようですわね」
水龍によって倒れたターディスを横目に見ながら、クーリアがぽつりと呟く。
そんな彼女に向かって、体格の大きな葉龍達が飛び掛かった。
「よそ見していられるのも今のうちよ小娘!」
「……こちらは少々飽きてきましたわ」
背から出現させたモルムの手で葉龍達を払い除けるが、シャゼルが開錠した庭から次々と新たな龍達が現れてきりがない。
しかも何故かシャゼルの龍達は、何故かモルムへの直接攻撃を避けている。
「……あなた、やる気ありますの?」
「アタシの可愛いモルムちゃんに傷ひとつ付けられるはずがないでしょう! アンタを倒してモルムちゃんを解放するのよ!」
「……本当に面倒で鬱陶しい人ですわね」
クーリアは煩わし気にモルムへ声をかける。
「後どれほど龍が残ってますの?」
『ファッ!? クー様ガ、僕ニ声ヲカケテル! ウレシイ!!』
「簡潔に質問したことだけお答えなさい」
『エット、エット……マダマダ、イッパイ?』
「……はぁ。こんな龍に尋ねた私が愚かでしたわ」
抽象的すぎる返答に額を押さえながらモルムから目線を外すと……。
今度はシャゼルが目の前でギギギ……と引きちぎらんばかりにハンカチを噛みしめているのが見えた。
「可愛いモルムちゃんになんて冷たい態度なの!? 信じられないわ!! アタシだったら、頑張って答えられたご褒美にたくさん撫でて、ギュウギュウに抱き締めてあげるのに!」
「……気持ち悪い」
「なんですって!?」
大きくため息を吐くクーリアにシャゼルが金切り声を上げる。
「アタシの方がアンタの百万倍モルムちゃんを愛しているのに……! 龍が嫌いならさっさとその子を手放せばいいじゃないの!」
「お断りですわ。この龍は私の理想を実現させるための道具ですもの」
「世界一可愛らしい存在であるドラゴンちゃんを、道具ですって……!」
「あなたにとってはそうでも、私にとっては世界一醜い生き物ですもの。道具として使ってあげているだけでも喜んでほしいものですわ」
クーリアの言葉に、龍腕で首根っこを押さえつけられたままのモルムがウンウンと頷いてみせる。
「モルムちゃん、どうしてそんな愛のかけらもないような子の側にいるの!? アタシの方がずっと可愛がって、幸せにしてあげられるのに!」
その問いかけに、クーリアは不愉快そうに表情を歪めた。
モルムが虐げられてもなお己の側にいるのは、決して自分のことを好いているからではないからだ。
持って生まれた体質のせいで、どれほど拒絶しても龍達は己の側に寄ってくる。
クーリアの外見や内面に好意を持っているわけではない。全て体質に惹かれているだけだ。
モルムも同じ。そんな相手をどうして好きになれるというのだろう。
自分の側にいる理由を聞いたところで、まともな答えなど返ってくるはずがないと思っていたクーリア。
しかし、モルムの答えは彼女の考えていた内容とまるで違うものだった。
 
 
シャゼルVSクーリアⅡ
箱庭ではたくさんの龍達が生活していた。
皆とても美味しいご飯を与えられて、毎日お手入れされて鱗や毛はピカピカのふわふわ。
争いのない平和な箱庭で与えられたものだけを享受する。
箱庭にいる龍の殆どは、置かれた状況に満足していて、『自分達は愛されている』と嬉しそうに話す。
けれど己はそう思わなかった。
甲斐甲斐しくお世話されるのが苦手でたまらなかった。
主人である人間は手を変え品を変え自分を輝かせようと構ってくる。
僕のためだと言うけれど、僕はそんなことを望んでなんていない。
でも拒否したら、周りの龍からつまはじきにされる。
僕とちがって皆ご主人が好きだから、きっととても怒られる。
それが怖くて、『嫌だ』のたった一言を口にできなかった。
『クー様、自分ニ嘘ツカナイ。自分ノ思ウママ二生キテル。好キ嫌イ隠サナイ。ゼンブ、僕ニハ無イモノ』
自分には無かったものを持つ彼女に憧れた。
次第にそれは好意へと変化していき、やがて彼女の望みをかなえてあげたいと願うようになった。
例えそれが『龍を滅ぼす』というもので、その中に自分が含まれていても構わなかった。
『嫌イッテ言ワレテモ、気持チ悪イッテ言ワレテモ、クー様ガ好キダカラ一緒ニイル。ソレガ僕ノ幸セ。僕ノ願イ』
 
モルムの言葉は、クーリアが考えていたものとはまるで違っていた。
この龍は自分の体質に惹かれていたのではなく、自分の内面に憧れを抱いていたのだと言う。そんな龍は初めてだった。
目を丸くする彼女をよそに、シャゼルは初めて聞いたモルムの本音に握りしめていた拳をゆっくりとほどく。
「……モルムちゃんがそんなことを考えていたなんて知らなかったわ。気付いてあげられなくてごめんなさい」
『シャゼル様……』
「世の全てのドラゴンちゃんの幸せがアタシの幸せ。だから悔しいけど、モルムちゃんがその小娘の側にいたいと言うのなら、アタシは諦めてあげる。
それがモルムちゃんの幸せになるのなら。……そして」
モルムに向けていた慈しみの目を鋭いものに変え、シャゼルはクーリアを見据えた。
「ここからは全力よ! たとえモルムちゃんを傷付けたとしても、アタシは世界中のドラゴンちゃん達の幸せを護るためにアンタを倒すわ!」
その宣言に、クーリアは小さく息を吐いて体から龍腕や翼を出現させた。
モルムの気持ちを聞いたからと言って、龍が世界一醜いものであるという意識も、龍のいない世界という理想のために戦うことにも変わりはない。
……けれど、ほんの少しくらいなら。
「さっさと終わらせますわよ……モルム」
『……! クー様、僕、ガンバル!』
はじめて名を呼ばれたモルムが歓喜に震える。
そんな二人にシャゼルは笑みを浮かべながら、己が愛すべき龍達の未来を守るために地を蹴った。
 
 
しっかり予習するんだズオ(`・ω・´)