龍玉により、シルヴィを通じて魂の共鳴を果たしたクァージェに龍王の声が届く。
『あの子の願いはボクに届いた。次はキミの番だよ、願いは決まったかな』
リンシアは愉しげに笑いながら問いかけた。
『キミは自由を好む気高い龍だ。彼女から解放されたいと言うのなら、その願いを叶えてあげることだってできるよ』
クスクスと笑う声に、相変わらず遊びが過ぎる龍王だと舌打ちする。
かつて彼女は弱々しい魂との契約を命じて、自身をシルヴィの魂に縛り付けた。
クァージェは自由を愛する嵐鷹龍。
願いが叶うというのなら、シルヴィからの解放を望んでいただろう。
……ただしそれは、彼女の願いの強さを認める前の自分だったらの話だ。
クァージェは試すようなリンシアの口ぶりににやりと笑みを浮かべて、答えを出す。
「今のシルヴィはアンタから巣立って、ようやく空に飛び立ったばかりの小鳥だ。まだまだ危なっかしくて放っておけやしねぇ。だからもうしばらくはこのオレが、アイツの翼になってやるんだよ」
“生きたい”という願いの強さを認め、共に空を駆けたクァージェの言葉を聞き、リンシアはほんの少し黙った後、とても楽しそうに笑い声をあげた。
『同じだねクァージェ。ボクもキミも、あの子を愛している。あの子が自由の空を飛び続けることを願っている』
「アンタと一緒ってのは気分がよくねぇな」
『フフッ。つれないことを言わないでよ、ボクの可愛い小鳥さん。キミの願いをボクが叶えてあげる。だってそれはボクの願いでもあるんだから』
風龍王の力がクァージェに流れ込む。
彼女の魔力を纏った風の翼に苦笑して、クァージェは龍玉を介して会話を聞いていたであろう今にも泣きだしそうな主に声をかける。
「お前の背中はオレ達が守ってやる。だから自由に空を駆けろ、シルヴィ」
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龍玉により、リューネを通じて魂の共鳴を果たしたトアに龍王の声が届く。
『全テヲ還ス汝ノ力 削ガレテイル』
ヴォルスーンは静かに、トアの魂に刻まれた傷を指摘する。
それは、ディステルの龍が還爪の力を奪った際についた傷だった。
『最早 還爪ノ力ハ皆無。彼ノ者ノ志ハ 果サレズ終焉カ』
ヴォルスーンの問いかけに、トアはかつて自身と契約を果たした存在を思い浮かべる。
龍と人との争いで傷つき彷徨う魂たちを輪廻の輪に還すため、ヴォルスーンが選びトアと契約した先代の青龍契士。
彼女は多くの魂を輪廻の輪に還したが、それは龍王に与えられた使命を果たしていただけにすぎない。トアは彼女が本当の願いを見つける日を待っていたけれど、結局最後まで願いが見つかることはなかった。
その少女の血と力を継いだリューネは、与えられた力に戸惑い、悩みながらもようやく自分自身の願いを、志を見つけている。
「我ガ青キ契約者ハ 未ダ道ヲ失ッテハイナイ」
ヴォルスーンの言葉を否定し、トアは大きな身体を揺らめかせる。
『我ハ最後ノ刻マデ 我ガ青キ契約者ノ行ク道ヲ見届ケル』
リューネの願いを最後まで見届けたいと強く望むトアに、ヴォルスーンは呼応する。
『汝ガ願イ 聞キ届ケタ 我等ガ青キ契約者ノ行末ヲ 共ニ見届ケヨウ』
トアに海龍王の力が流れ込む。
誕生と進化を司る海の力は魂の傷を癒し、新たなる還爪の力を生み出した。
『ありがとう。海龍王様、トア』
一瞬聞こえたその言葉は、龍玉を介して龍王達の会話を聞いていたリューネのものか、それともかつて青龍契士だった彼女の母のものか。
トアは静かに、契約者の魂に寄り添った。
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しっかり予習するんだズオ(`・ω・´)